クラッシャー上司を牽制する為に、私はブラック企業に入社してから初めて会社を休んだ。そして私が会社を休んだ次の出勤日にブラック企業に出社したが、もちろんとくにかわりはなかった。いつも通りの日常が流れていく。
こんなことで何かがかわるはずがない。そんなことは百も承知だったのだが、これほどまでに意味の無かった行為ということがわかると、私たちが考えた作戦とは一体なんだったのか・・・いささか、意味のない行いで思いつきに過ぎず、単なる幼稚な手段にすぎなかったのではないだろうか・・・そう思わざるを得なかった。
また一日会社を休んだことにより、仕事は相当数たまり、一体私は何をしたかったのだろう・・・と思わざるを得ない日が続いた。
それからしばらくしたある日。私とKはブラック企業で開催している通例のイベントのために、朝から手伝い係として都内某所に呼ばれた。午前中の手伝いを終え、会社に戻ろうとした時、私とKは会場に来ていた松堀と一緒に帰ることになった。
そして会社へ帰る時間をこの松堀と過ごしたことにより、私たちの状況は大きく動くことになった。
松堀によると、クラッシャー上司との会食のことは社内でも話題になっているらしかった。なんでもブラック企業の幹部が集まる朝の集会でその会食が話題になったという。
そして松堀により「素晴らしい会食であった。二人とも悩みを打ち明けてくれ、親身に相談に乗った」と報告されていることがわかった。私とKは一瞬目をあわせ、一体何の話をしているのだろうとお互いの目をみてアイコンタクトをした。
しかしどうやら先日私とKが出席した会食ということがわかると、私とKは真実を話していいものかどうか思い悩んだ。実は相談会ではなく単なる詰め会、それも仕事のことではない単なるクラッシャー上司の憂さ晴らしの場。
そんな真実を話していいものかどうか・・・私はその場で、思い悩んだが、もしかしたら・・・と思い、全てを打ち明けることにした。
すると松堀の目が変わった。
「君たちの話が真実ならばこれは大変なことだ」といい、その場で話を重ねた結果「それでは君たちにひとつだけ質問がある」と私たちに問うてきた。
それは「クラッシャー上司に上司としての器があると思うか」という質問だった。私とKは正直に「ないと思う」と答え、それならばと「どうしたら良いと思う?」と聞かれた。
私とKは「まずはクラッシャー上司を今の部長と言う座から降りるべきだと思う」と話した。その後松堀はこう言った「貴重な意見をありがとう。一応は断っておくけど、このことは僕の上の人間、つまり副社長のシゲキさんと社長にあげさせてもらう。それでいいかな」と言った。
私とKはこれまでの経緯により、返答に困ったが、もしこのことで物事がいい方に変わるのなら・・・と「お願いします」と答えた。しかし、この松堀とのやり取りが、その後の私のブラック企業での人生を大きく変えるきっかけとなった。
そしてそれは、同時に私がブラック企業で過ごした壮絶な地獄の日々のはじまりを意味していた。
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