実はそこで私が社長にどんな提言をしようと、何も変わらないことはわかっていた。それは、ブラック企業の密告者斉藤から情報を仕入れていたことに関係する。
今まで、数多くの人間が、ブラック企業の社長に会社のおかしいところを正してほしいと、提言してきた。その時は、一瞬よくなるのだが、すぐに風化し元通りになる。だから要するに良くなった兆候はみせるものの、結局はまた元通りになる。その繰り返しだったという。
唯一の成功例が増山の密告による、クラッシャー上司の一人、パワハラおじさんの本社片隅への左遷だった。長い年月をかけパワハラおじさんだけは本社の片隅に左遷することが出来た。
だから今度もまた同じに違いない。結局は何も変わらないのだろうな・・・私はそう思っていた。一応は社長の責任と言うか、社長だから社員の悩み相談にはのってあげよう・・・そのくらいに思っているのだなと思っていた。だからこそ、半ば諦めムードだったということもあり、私は事実だけを話すことが出来たし、どうすれば改善されるのか、その考えを述べることができた。
案の定、すぐにその話は白髪のクラッシャー上司へと伝わり、誰によりその話があったのかも全て筒抜けで伝わった。つまりは私によりそういう話が密告されたと言う事実が会社中に伝わることとなった。
もうその時点で密告ではないのだが、それが私が勤めることになったブラック企業の恐ろしいところだ。誰に言おうと、それが社長であろうと、包み隠さず、全ての人に伝わるという風通しの良さ。
こういうことを、風通しが良いと言うのかどうかわからないが、ほどなくして私が社長に報告した事実がブラック企業に勤める全社員に伝わることとなった。
もちろん、その事実を白髪のクラッシャー上司が面白いと思うわけがない。かくして、社長の密告ばらしにより私と白髪のクラッシャー上司による社内バトルの戦いのゴングが正式に鳴り響くこととなった。
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