話は大須がブラック企業に転職してくる前にさかのぼる。私は何度も同期入社であるKを慮りKを飲みに誘った。何故なら私の同期入社であるKは、日に日に顔色が悪くなっており、目の下に隈が黒く残り、活力がなく、いつも何かにおびえたような顔をしていたからだ。しかし、いつも約束の日になるとKのクライアントから呼び出しがかかり、結局なかなか実現することが出来ずにいた。
その頃のKと言えば、ちょうど一番大変な時期で直接の上司である高崎から引き継いだクライアント、さらに社内の社員から、つまり四方八方からクレームが入っていた時期だった。仕事に慣れていないことも重なり、なかなか思う通りにことを運ぶことが出来ず、なかなか苦労をしていたようだった。
私はそれまで、Kがどんなことに悩んでいたのか知らなかったし、また同期入社だからこそ出来る情報交換も行うことが出来ずにいた。しかし、ある日、偶然にも予定が合い飲みにいくことになった。
どんな偶然が重なったのかと言えば、私は私で仕事をなかなか片付けることが出来ずに、会社で作業をしていると、Kも偶然帰社し、仕事を片付けてから終電までの間、少しばかりお酒を飲むことにした。
「仕事は今どんな状況?」
Kは私にそう問うた。私はまだ何とも言えないと答えた。するとKは眉間に皺を寄せ、
「最悪ですよ」
と一言私に言った。私はすかさず「どういう意味ですか」と訊くと
「高崎の野郎、あいつちっとも仕事をしていなかった」といった。私はなんとなく状況を飲み込み、「どんなクレームが?」と訊くと「取引停止ですよ。引き継いで初めての電話で取引停止。まったく意味が分かりません。電話に出たらクライアントが激怒して、状況がわからないので高崎に確認してから折り返すと訊いたら、誰だそいつって・・・もうまったくわけがわかりません」
つまり、高崎はクライアントに名前さえ覚えてもらっておらず、またそれ以上に顔さえわからず一体今誰が担当なのだかわからないという状況だったそうだ。つまりクライアントからの呼び出しの電話を受けることをせず、そのまま放置していた・・・ということらしい。
「ほとんどのクライアントがそんな状況です。この前、私が初めてあったクライアントには何故かこっぴどく怒られてしまいました。なんで挨拶にこねーんだよと。ずっと待ってんのにちっともこねぇじゃねえか。一体お前んとこの会社はどうなってんだ、と」
私の転職したブラック企業では営業の携帯電話(フィーチャーフォン)に直接クライアントから電話がかかってくるのが常だった。だからクライアントとのやり取りはその個人間で主に行われるので会社に隠そうとすれば比較的容易く隠すことが出来る。
さらにKは続ける。
「この前のオカマも最悪でした。殴られるかと思いましたよ。いきなりクライアントが、オカマだなんてきいてませんよ。一緒にいったうちの部長もマジでつかえねえヤツで、ただしょんぼりしてるだけ。しまいには良い経験になったな・・・とかぬかす始末。こっちは良い経験になったなじゃすまねぇって言うんだよ。マジであいつら(高崎とKの部の部長)仕事舐めてますよ」
Kは続ける。
「この前のインド人もまったくわけわからねぇし、だって日本語通じないんですよ。どうやって日本社会で会社を経営しているっていうんだっつうの。どうやって取引の契約を結んだって言うの。なんで日本語が通じないのに「ワタシ、ニホンゴ ワカリマセン」なんて答えられるって言うの。お前ニホンゴわからないって言っておきながらニホンゴわかってんじゃんって。しかもさっきまでニホンゴ喋ってたのに、自分の都合の悪い話になると急にニホンゴわかりませんってもういみがわからねぇっつうの。もうつっこみどころ満載だっつうの」
そしてこの後Kから続々とブラック企業がブラックたる所以の話をきくことになる。つまり、私たちが転職した会社がどれだけブラックかについてKの実際にあった出来事をきくことになった。
つづきはこちらから【ブラック企業体験談】私が転職したブラック企業の仕事の実態
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