ブラック企業の数字のからくり。経営が健全かどうかは、売上高だけでは判断できない。

私が就職したブラック企業は業種は卸売業で売上高でいうと年50億以上、年次成長率120%越えの企業だった。この数字をみてあなたはどのように感じるだろうか?

 

「卸売業で年次成長率120%?今の不景気の時代にすごい企業だ」

 

そう感じたあなたは、結局はブラック企業の作中にハマっている恐れがある。それはなぜか?理由は簡単で120%という数字の中身をみないと本当のところはわからない。数字だけでは判断できない要素が必ずある。それこそが数字のトリックで、だからこそ、その120%という数字がどのようにつくられているのか、その具体的な内容をしらないと本当のところは見えてこない。

 

私の就職したブラック企業ではこうだった。数字がある程度読めないとわからないが、実は全体をみれば目減りをしていた。新規開拓でカバーをしていたが、それでも既存のクライアントはかなりの目減りをしていた。つまり全体的にお客が逃げていっており、全体的な売上自体は下がっていたのだ。ではなぜ120%なのか?それにはこんなトリックがあった。

 

その理由のひとつは、細かく数字を見ていくと、あるクライアントが急成長を遂げていたためその売上高がつくられていたという事実があった。

 

その比率は会社全体の売上の20%以上。もちろんこれは会社経営として健全ではない。ひとつの企業に会社の売上の20%以上を頼っている企業というのは実に健全ではない。リスクが高すぎるのだ。何らかの問題が起きた場合、一気に経営が傾く恐れがある。

また、売上の大半をひとつの企業に頼ってしまっているため、ビジネス面での様々な交渉も不利になる。中で働いた人間の率直な感想だが、実際振り回されていた感は否めない。

 

さらに言おう。私が就職したブラック企業は全国的に有名なクライアントも持っていた・・・が、うまい具合に数字が操作されていた。どういうことかというと、そのクライアント単体でみて、なおかつその企業の単体の全体的な売上の内訳、さらに平均値を計算してみると粗利が4%以下。純利益率ではない。粗利がだ。粗利がこの数字なので純粋な利益はないといっても良いだろう。そればかりか、売上は上がっているものの利益で言えばマイナスになっているはずだ。(この辺りの計算方法についてはちょっとした会計の知識が必要になる)

 

つまりどんなに売上をあげようとも会社にはお金が残らない状態ということになる。もっと言えば売れば売るほど損をする。でも売れば売るほど売上は上がる。

 

しかも粗利が4%ということからもみられるように、クライアントには非常に低価格で品物を提供できるため(限りなく原価に近い価格)売上はあがる。だから120%という数字が生まれる。

 

話をわかりやすくするために、例を挙げると、例えばあなたが一本100円で仕入れた商品があったとする。それが商品原価だ。粗利が4%ということは、その一本100円で仕入れた商品を104円で売るということだ。粗利(粗利益=売上高ー原価)であるので、そこには人件費などの「販売費及び一般管理費」が一切のっていない。卸売業は商品流通の過程において、中間で利鞘を稼ぐ業態であるのでまさしく商売が成り立たない自転車操業状態。お客から言えば都合のいい存在でしかなくカモにしかすぎない。

 

つまり話をまとめると、簡単に売る事ができるので売上は挙げることが出来るが、利益がまったく出ない、儲からないビジネスモデルの企業だったということになる。

 

急成長中の企業だとか、成長企業だとか、そういう甘い言葉にだまされてはならない。冷静に分析をしないと見えてこない部分が必ずある。

2件のコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です